チャットボットを利用したビジネスは、急速に拡大しつつある。その1つがオンラインショッピングである。従来のオンラインショッピングといえば、顧客がページ上のカタログを見て、そこから商品を選ぶ。衣類であれば、さらにサイズや色といった選択を行い購入となる。それをチャットシステムで行うものだ。
ここでは、2つの事例を紹介するが、いずれも米国のオンラインショップである。配送などの関係で、日本からは利用できないようだ。サンプル画面などから、どのようにショッピングが行われるか見ていきたい。

さまざまな商品を扱うOperator

まずは、Operatorである。

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図1 Oparetor(https://www.operator.com/

家電、衣料品、チケット、家具など幅広い商品を扱う。図2は、花を探しているところである。

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図2 花を探す

顧客が「来週、私の妻に花束を届けたい」と書き込むと、「もちろん、彼女が好きな特定の花はありますか?」と応える。さらに「彼女はピンクが好き、何か旬はある」と書き込むと、ボットはチューリップの花束を選び、写真や価格などを表示する。単純な例ではあるが、ボット化されており、自動的に対応が行われる。

図3は、チケット購入の例である。

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図3 チケットを探す

「この夏のBonnaroのチケットを3枚探しているんだけど」という書き込みに対し、ボットは「次の金曜日の10時に、購入できます。同時にキャンプの入場券も必要ですか?」と尋ねる。チケットだけでなく、付随して必要になるものを提案している。このあたりも、普通のオンラインショッピングでは、このようにはいかないであろう。
そして、もう1つ注目したいのは、図4のAnythig(なんでも)である

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図4 Anythingで何かを探す

顧客からは「卒業祝いで、妹を驚かせたい」という目的のみの書き込みが行われる。こういった書き込みに対しても、ボットは対応可能である。「もちろん。何かはっきりした希望はありますか?」とボットが応える。そこで、顧客が「彼女は3日間のカヤック旅行に行っています。そこで何かに使えるものがいいかも」と対応する。最終的にボットは、水の上で使える防水スピーカーを選んだ。
こういった対応も可能になっている点にも注目したい。

レビューも表示するMezi

次に紹介するのは、Meziである。

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図5 Mezi(https://mezi.com/

まずは、リクエストからスタートする(図6)。

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図6 リクエスト

ここでは、スタイリッシュなスニーカーを探していることを書き込む。追加で「今、本当に流行(hip)しているのを探している」を書き込む。ここでは、「hip」というスラング(俗語)が使われている。その後、ボットはサイズを尋ねるなどをし「おもしろいオプション付けるから数分待って」と対応する。
実際にボットが選んだスニーカーが、レビュー付きで表示される(図7)。

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図7 レビュー

「fashionable and hip sneakers」と紹介していることから、「hip」について、ボットは正しく理解しているようだ(実際、売れているかはわからないが)。画面では1セットのスニーカーの写真しか表示されていないが、いくつかのオプションが示され、そこから顧客のニーズに合わせて選んでいくことになる。ここに表示されたレビューは、実際に購入したユーザーによるものである。レビューを表示することで、ボットだけでは得られない商品情報や使用感などを知ることができる。このあたりの工夫もよくできているといえるだろう。

最後は確認画面となる(図8)。

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図8 確認

あとは、最終確認を行い、購入となる。購入後のサポートなどもあるようだ。
いずれのチャットボットでも、顧客履歴の分析による提案は行っていないようである。今後、顧客履歴を活用し、顧客の嗜好に合わせた商品の提案を行うようなショップも登場する可能性は十分考えられる。具体的には「色は白がお好みでしたよね」とか「いつものサイズは7でしたよね」といった対応をする。

チャットが変える接客体制

さて、ここで国内の事例を紹介したい。残念ながらボット化はされておらず、人間がオペレータとして対応する。大東建託では、LINEトークを使ったお部屋探しサポートサービスを行っている。アパートやマンションなどの賃貸に関する相談や入居までの手続き、探し方のコツなどを、専任のオペレータLINEトークを使い、アドバイスする。そのイメージは、図9のようになる。

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図9 大東建託お部屋探しサービス(プレスリリースより引用)

スタンプなども効果的に使い、顧客のニーズに応える。チャットを使うことによって、非常に簡単に、また気軽に入力を行うことができるようになり、店舗への集客のきっかけになっているケースが多いとのことである。やはり、チャットの持つインターフェイスの快適さがそのままビジネスに受け入れられているといえるだろう。
そして、もう1つの効果もあったとのことだ。従来は、あまりなかった基本的な質問や問い合わせが増えた。これは、電話やメールでは質問しずらかった内容が、チャットでは可能となったといえる。結果として、さらなる集客や契約成立に繋がっていると大東建託では分析している。
大東建託ではないが、このようなチャットシステムを導入後、一部を自動化してコスト削減を達成した企業もある。このようなサービスを継続することで、より多く質問される内容や傾向分析が可能となるだろう。その分析から、よくある質問と回答をデータベース化する。顧客から問合せがあったら、データベースにあるような簡単な問合せであれば。チャットボットが直接、回答を行う。もし、データベースにない、個別の対応が必要な問合せの場合には、オペレータが対応を行う。

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図10 チャットボットとオペレータの分離

このように、チャットボットとオペレータの作業を分離することで、迅速な対応が可能になり、コストも削減できるだろう。
本稿で紹介したショッピングシステムでは、最初から100%のボット化をしている。しかし、最初は人手による運用を行い、履歴が蓄積された段階で、部分的にボット化するという方法も十分検討に値するだろう。逆に、100%を目指すあまり、かえって不親切な顧客対応となっては、意味がない。このあたりは、サービス内容やコストなどを考慮し、導入計画を作ればよいであろう。
いずれにせよ、チャットによるサービスがこれまでにない顧客との接点となっている。従来では、あまり行っていなかった対応が可能になったり、まったく別の要望やニーズを生み出すこともある。また、ユニークな事例があれば、紹介したい。