さて、ここまでにチャットボットの仕組みやオンラインショッピングでの事例を紹介してきた。今回は、国内(つまり日本語)で使えるチャットボットの事例を紹介したい。

チャットボットで仕事探し

まずは、ウォンテッドリーのFacebookメッセンジャーを利用した仕事探しである(Facebookのアカウントが必要になる)。もともとウォンテッドリー社は、ビジネスSNS「Wantedly」を運営している。同社によれば、共感という軸で、会社と人をマッチさせることを目的としている。サービスを開始して4年が過ぎるが、それまでに登録された会社や求人情報がベースとなっている。実際にやってみよう。Facebookアカウントで、ログインする。

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図1 ウォンテッドリーのFacebookメッセンジャー
https://www.messenger.com/t/wantedly/

メッセージに希望する職種や勤務先などを書き込む。ここでは「東京でデザイン関係の仕事」としてみた。すると、その条件にヒットした募集案件が、数点表示される。

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図2 検索結果の表示

[いますぐ募集を見る]をクリックすると、Facebookのメッセンジャーから移動になる。

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図3 Facebookから移動

すると、ウォンテッドリー社に登録されている募集要項などが表示される。

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図4 探募集要項の表示

一般的な求人サイトでは、勤務先(沿線)、職種、勤務時間などを入力して、その検索結果から選んでいく。多くの場合、勤務先の選択では数十の項目から選ぶ、何階層もの選択が必要となる。そのスタイルとは大きく異なる。そして、特徴的なことは、チャット形式なので複数の検索語を入力しやすい点である。一般的な検索では、複数の検索語を使った検索を行うユーザーは少ない。その点、チャットの場合、自然な文章入力ができることで、職種や地域といった必要な要素を素直に入力できる。
メッセンジャーでは、高度な意味解析は行っておらず、入力されたメッセージを単語に分割し、それぞれの単語に重みをつけ、データベースに問い合わせている。図5は、地域と勤務時間帯を指定してみた。

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図5 「横浜で夜の仕事」

「横浜」と「夜」という単語に合わせて、球団の翻訳者を募集する案件が表示された。
高額な報酬の求人サイトでは、コーディネータが求職者と面談を行い、たんに職種や希望をマッチさえているわけではない。求職者の経験や能力なども勘案し、募集企業とのマッチングをしていく。メッセンジャーでは、チャットを使うことで、それに近いことが達成されようとしている。パートやバイトの募集でも、こういった機能が実現すれば、双方にメリットがあるだろう。このあたりは、今後に期待したい部分である。
実際に、いくつか検索をしてみたが、希望する案件がぴったりと見つかったかといえば、そうでもない(筆者自身が、求職活動をしていないので本気さが不足している面もあるが)。しかし、「人事関係がフラットな会社」や「育休がとりやすい会社」といった検索が今後は可能になるかもしれない。逆に募集する側でも、従来のような募集要項から、変化していく可能性もあるだろう。第1回で「検索が変わる」といったが、従来の求人サイトといかに違うか、実際に体験してみてほしい。

チャットボットで、ユーザーサポート

次に紹介するのは、アスクルが運営する販売サイトのLOHACOである。

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図6 LOHACO(http://lohaco.jp

ちょっとわかりにくいかもしれないが、トップページの右下に[LOHACOお客様サービスディスク]となる。このフキダシのアイコンなどをクリックすると、チャットによるユーザーサポートになる。すべてがボット化されているわけではないが、省力化に大きく貢献したとのことである。

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図7 LOHACOのお客様サポート

オレンジ色の枠内に、文章で質問をしていく。ここに入力された文章を人工知能(AI)によって、内容解析を行う。この女性キャラクターであるが、マナミさんという名前がついている。実際にやってみよう。まず「配送会社を選べますか?」と聞いてみた。

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図8 質問を入力

この質問に対し、AIによる分析が行われ、いくつかの候補が示される。

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図9 候補が表示

ここで[配送会社は?]を選択する。それに対する回答が表示される。

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図10 配送会社の回答

問題が解決したら[はい]を選べばよい。次の質問の確認となる。

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図11 次の質問の確認

もし、図10で[いいえ]を選ぶと、図12のようになる。

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図12 [いいえ]を選んだ場合

「私ではお答えできない可能性がある」と表示され、一般的なお問い合わせフォームを利用するように提案される。つまり、これ以降は人手による対応となるのであろう。アスクルによれば、2016年3月の問い合わせの約1/3をマナミさんが、カバーしたとのことである。
注目してほしいのは、回答によって女性の表情が変化しているところだ。図11では、よりうれしそうな表情に変化している。図12では、困った顔になっている。それほど意味のある機能ではないが、こういった工夫が、よりユーザーフレンドリなUIとなっているといえるだろう。

LINEで荷物の確認や変更可能に

ヤマト運輸は、2016年6月、荷物の問い合わせをLINEで行えるサービスに、人工知能(AI)がトーク形式で荷物問い合わせ、集荷・再配達の依頼や料金・お届け日検索などを行う機能を追加した。もともとは、2016年1月に、LINEを通じて配送予定や不在連絡を通知するサービスを行っていた。しかし、配達日時や場所の変更には、Webサイトに移動する必要があった。
今回の機能の追加によって、LINE内で操作を完了させることになり、より利便性が向上したといえる。図13は、サンプル画面である。

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図13 ヤマト運輸LINE公式アカウントサンプル画面

中央の画面が、配達日時の変更を行っているシーンである。やはりここでも、チャットのインターフェイスが活かされている。運送業界では、再配達などが問題化している。その対策としても有効な1つといえるだろう。ヤマト運輸では、同時に電話やメールよりもLINEを使ったサービスを拡充する方針を打ち出している。

ヤマト運輸の事例では、実際に使った例をお見せすることができなかった。しかし、ウォンテッドリーのFacebookメッセンジャーやLOHACOのお客様サポートを使った印象であるが、まず、対応の速さを感じた。ストレスを感じることなく、回答が返ってくる。このあたりは重要な要素といえるだろう。
今後は、想定されないようなユーザーからの質問や問いかけに対し、どのように対応していくかがポイントになると思われる。逆にいえば、運営側は現在も質問内容などをきちんと収集し、その解析を行っていると思われる。ちなみにウォンテッドリーでは、「在宅」という検索が多いとのことだ。しかし、求職者がなぜこの言葉を使うのか、世の流れとして在宅勤務は普及しつつある。しかし、同社では、このようなメッセンジャーの求職者の意図を十分に汲み取れきれていないとのことである。一方で、ビジネスチャットの普及により、在宅勤務が一気に、普及するという兆しもあり、チャットボットの秘書、あるいは、総務などの登場により、在宅勤務が支援されるということも近未来には実現されるかもしれない。一般的な質問には、対応はしやすいだろう。しかし、想定外の質問に対し、AIが完全に対応できるかは微妙なところである。
そして、もう1つ感じたのは、チャットがコミュニケーションツールとしてだけでなく、ビジネスや検索の手段として大きく期待が持てる点である。もし、この記事を読まれたのであれば、実際に試してみていただきたい。その可能性を、リアルに体験できるはずだ。